鈴木康博さん、山本潤子さん、細坪基佳さんというまさしくフォーク、ニューミュージック、J−POPの歩みともいえる『Song For Memories』という素敵なタイトルのジョイントはまさしく同窓会のような懐かしさに包まれていました。
自分達で曲を作り、アコースティックなサウンドでしっかりとメッセージを聴衆に伝えるという、シンプルですが確実にリスナーの心をとらえる歌が、当時しっかりと存在していたのは事実です。3人の歌唱力には定評がありますし、ハーモニーの合わせ方はキャリアだけでなく、それぞれのアーティストの歴史や活躍へのレスペクトが感じられる温かいものでした。
3曲目のブレッド&バターの「あの頃のまま」のハーモニーと楽曲に強く惹かれました。呉田軽穂の作詞・作曲だったのですか、ユーミン提供の曲とは知りませんでした。1970年代後半、フォークからニューミュージックへと音楽のトレンドが移っていった頃の香りが強く伝わってきます。彼らの経てきた足跡と同時代の音楽スタイルは今聞いても懐かしさは感じても輝きは全く褪せていないことに驚いています。
チューリップの「魔法の黄色い靴」、吉田拓郎「夏休み」、BUZZの「ケンとメリー‾愛と風のように‾」、RCサクセションの「雨あがりの夜空に」、石川セリの「八月の濡れた砂」など、懐かしいこれらの曲を聴くたびに、これらの音楽を共有し共感できた世代は幸せな音楽体験をしてきたと言えるかもしれません。まるで彼らが昔一緒にグループを結成していた頃があったかのように感じられました。
サザンオールスターズの「YaYa ‾あの時代を忘れない‾」も、鈴木康博さんの編曲によって見事に自分達の音楽に昇華していました。爽やかさと懐かしさを感じさせるハーモニーの魅力がストレートに伝わってくる演奏と言えるでしょう。
なお、リーフレットには曲の解説もメンバーの紹介もありません。ターンテーブルとLPレコードのイラストを載せるページがあるのなら、もう少しファン・サービスがあっても良かったのでは、と思います。何しろこのアルバムを聴くリスナーは懐かしいあの頃に一時戻りたいわけですから、そのような配慮も必要でしょう。